私は言い当てることができる
命ぜられてある人 私の放浪する半身
いったい其処で
お前の懸命に信じまいとしてゐることの
何であるかを
これは伊東静雄の「晴れた日に」の末尾。
年譜によると伊東は昭和四年(1929年)二十四歳の時に京大国文科を29人中3番の成績で卒業したとある。卒論『子規の俳論』には、当時としては最高点の82点が与えられた。
静雄を強力に推薦した講師は『子規の俳論』を一読して「一般のいわゆる研究というものとして、あまりにも激しい情熱を湛えていることに驚いた。しかもそれは奔放な主題に任せた煽動的な論議ではない。非常に手堅い思索の底から、抑え切れないで湧き出す泉のようなものであった」と感動している。
激しい情熱を湛えていながら、非常に手堅い思索の底から、抑え切れないで湧き出す泉のような日本語を見なくなって久しい。弛緩しきったクズのような言葉がSNSはもとより、新聞やテレビの中に溢れ返っている。あまりにも見え透いた論理と底の浅い表現のために日本語に酔えないのだ。
ところで、日本国憲法は昨日3日、1947年の施行から76年を迎えた。
以下は読売新聞の記事。
「読売新聞社は憲法に関する全国世論調査(郵送方式)を実施し、憲法を「改正する方がよい」は61%(前回昨年3〜4月調査60%)と、2年連続で6割台の高い水準となった。コロナ禍やロシアによるウクライナ侵略など、憲法のあり方を問う世界規模の出来事が相次いだことが影響したとみられる。」
「憲法のあり方を問う世界規模の出来事」という日本語は、「世界規模の出来事」を「憲法のあり方を問う」もの、すなわち改憲と軍備増強に結びつけたい読売新聞の姿勢そのものだ。
なぜなら、「世界規模の出来事」から日本国憲法を擁護することもできるからだ。その可能性をあらかじめ排除して自民党のプロパガンダ新聞になることを選択している。
「憲法で変えるべき条項はありますか?それは何条ですか。その理由は何ですか?」 とは決して聞かない。ここまで聞いて、はじめて意味のある質問になるのだが、そんなことをすれば、自分たちにとって都合の悪い結論が出て来る可能性があるからだ。
都合の悪い論理を排除し、改憲を前提にする。そしてその前提がどれほどおかしいかについては考えない。これこそが読売、フジテレビ、NHKをはじめとする大手メディアの致命的な「盲点」である。朝日新聞やTBSも例外ではない。この「盲点」を「盲点」と自覚しないメディアの末路は歴史が証明している。
そのことに関連して私は今から7年前に「都合の悪い論理」と「盲点」を具体的に指摘した。この3つの記事を連休の最中に読んでみようと思う奇特な人は今や絶滅危惧種に属するかもしれません。それが以下の記事です。
・憲法九条を蘇生させるために
http://oitamiraijuku.jugem.jp/?eid=119
・良心的兵役拒否の権利から積極的中立主義へ−その1
http://oitamiraijuku.jugem.jp/?eid=127
・良心的兵役拒否の権利から積極的中立主義へ−最終版
http://oitamiraijuku.jugem.jp/?eid=129
さて、以下の動画は、「都合の悪い論理」と「盲点」を山本太郎がこれ以上ないくらい簡潔に説明したものです。それぞれ10分ほどの動画です。是非ご覧ください。