イディオクラシーとコーポラティズムは現代日本を牽引する車の両輪です。イディオクラシーとは「idiot(馬鹿)」と「cracy(政体・権力)」という接尾辞から作られた造語です。 aristocracy、democracy、などと同じです。
それがどのように現象しているか、例として、海洋放出を決めた放射能汚染水(処理水ではない)について大手メディアの報道を見てみましょう。
その前に質問です。青酸カリやヒ素が、たとえ微量でも溶けている水をあなたは毎日飲み続けることができますか?無理ですね。でも、「水道水と変わらない」くらいに薄めれば大丈夫という人がいます。ご存じネトウヨの皆さんです。
しかし、薄めたからといって毒性がなくなるわけではありません。つまり、濃度の問題ではないのです。魚をはじめとする海産物や人体に蓄積・濃縮していく総量が問題なのです。放射能汚染水を海に流すことが現実的だという人は、こんな基礎的なことすら分かっていません。
水俣病の原因物質は、チッソ水俣工場で生成されたメチル水銀化合物でした。それが工場廃水として排出され、水俣湾内の魚介類を汚染したのです。地域住民は、魚介類の体内で濃縮されたメチル水銀化合物を摂取して発病します。まずカラスが方向感覚を失って岩に激突し、猫が狂って踊り出します。そして人間が発症するのです。それでも高名な東大の学者は裁判で因果関係を否定しました。
パンとサーカスにより記憶喪失に陥った国民は、わずか数十年前の事実を忘れ、思考力も失ったのです。さすがに日本の教育はすばらしい。就職斡旋業として各所に人材を配分することで、この種の人間を大量に生み出しているのですから。
思考力を失わせるためには、受験に役立つか否かといったモノサシを使って言葉から中身を抜き取ります。私たちの国では、それを効率的に葛藤なくできる人間が優等生と呼ばれます。
その例が「風評被害」という言葉です。「処理水」も同様です。私はこの言葉を聞くたびに、「実害」を無いものにする、つまり、見て見ぬふりをする東電や官僚やマスメディアの荒廃ぶりを目の当たりにして心身ともに衰弱するのです。まるで大便のかたまりと吐瀉物を口にねじ込まれているような気分です。
孔子が言う「名を正す」ことの深い意味を痛感する瞬間です。正しい言葉を使うことによってのみ、悪臭を放つ糞の中に首まで浸かっている状況から私たちは脱出できるのです。
忘れた人もいるかもしれませんが、福島第1原発の事故の深刻度はレベル7だったのです。原子力緊急事態宣言はいまだ解除されていません。放射性物質が大量に環境中にばら撒かれたのは事実です。「風評」=デマではありません。
にもかかわらず、この言葉を使うことで、原発に反対する人をデマに踊らされているだけだと批判できます。一方で、汚染のリスクを指摘する原発事故「被害者」を、デマを流す「加害者」にすり替えて沈黙させることができるのです。
さらに、放射性廃棄物の海洋投棄は、ロンドン条約およびロンドン議定書で禁止されています。日本ももちろん批准しています。 これと、今回の「放出」はどう整合性が取れるのでしょうか。
東京オリンピック同様、日本のマスメディアも政治家も海外からの視点が欠落しています。コロナが蔓延している状況でオリンピックは無理ではないか、と指摘したのはニューヨークタイムズとガーディアンなのです。
話を戻します。海洋放出される汚染水は、現在タンクにたまっているものだけではありません。この先100年は流され続けることになるのです。その結果はだれにも予想できません。データがないのですから。だから、どさくさに紛れて流してしまえと言うのでしょうか。以下は、3年前の記事です。想像力のない人たちから一笑に付されることを覚悟で書きました。よろしければお読みください。
100年後の生存戦略−その2 教育・国宝 閑谷(しずたに)学校
http://oitamiraijuku.jugem.jp/?eid=488
この件について、ネトウヨとテレビ、新聞が報道していることを検討しておきます。
1:他国(特に韓国)もトリチウム水を流している。
2:天然にもトリチウムは存在する。
3:薄めれば問題ない。
3は誤りです。
1と2は嘘ではありませんが、重要な点を故意に見逃しています。
福島第一原発のデブリ汚染水と事故を起こしていない原発から出るトリチウム水は全く別物です。アルプスではトリチウムだけではなく、ヨウ素129、セシウム135、セシウム137など、12の核種は除去できないのです。このことは、東京電力が2020年12月24日に公表した資料で認めています。ちなみに半減期は、ヨウ素129は約1570万年、セシウム135は約230万年です。
要するに、デブリ汚染水は正常運転の原発廃棄物とは似て非なるものです。溶け落ちた核燃料と水が直に接触して反応した放射性物質なのです。通常の原発では燃料棒は被膜管に覆われているため水と接触することはありません。アルプスで除去できない12種のうちの11種がこの事故特有の放射性物質なのです。福島のタンク保管水は決して処理水ではなく、紛れもない汚染水なのです。
あなたは、「飲んでもなんてことはないそうだ」と言う麻生財務相やネトウヨに与するのでしょうか。政治家も企業のトップも、もはや「idiot(馬鹿)」と呼ぶにふさわしい。無知ゆえに思考することができないばかりか、その無知を払拭すべく学ぼうとすらしないのです。オリンピックのバカ騒ぎを見るまでもありません。
最後に衆議院議員の細野豪志氏のツイッターを取り上げます。ここまで読まれた方はその間違いに容易に気付くと思います。
4月14日のツイッターより
「韓国にはトリチウムを多く出す重水炉がある。福島で放出が検討されている処理水濃度は1,500Bq/L。韓国で放出されている処理水の濃度基準の40,000/Lより一桁低い値だ。わが国は堂々と反論すればいい。韓国は自分の首を絞めるだけだ。」
まず事実の問題から
1: わが国の海洋への排出基準濃度は60,000Bq/L です。
2: 福島第一原発におけるサブドレン、地下水バイパス排出の運用目標濃度が1,500Bq/L です。
日本は韓国より基準値がゆるいのですよ。わかりますか?そもそも規制基準濃度だけを比較しても意味がありません。「実際に」排水される濃度を比較しなければなりません。誰が濃度を測るのですか。東電ですか?御冗談でしょう。さらに、問題は核種の濃度ではなく総量です。「自分の首を絞め」ているのは、細野豪志さん、無知なあなた自身です。
4月15日のツイッターより
「処理水の海洋放出の妥当性について英語でツイートしたところ、リプはかなり荒れた。当然と言えば当然だが、海外の人の処理水に対するリテラシーは国内よりも格段に低い。明日から政府に対して英語での発信を求めていく。このままでは国際世論戦は勝てない。」
豪志さん、「海外の人」って誰のことですか?「国内よりも」って、国内の誰と比べているのですか?ネトウヨのご機嫌取りする暇があったら、ちゃんと仕事しろ!それ以前に、ちゃんとした日本語を学んではどうか。
ところで、これをリツイートして喜んでいるのが、例の大分市中春日町にあるY田ゼミ塾長です。支持を安倍からトランプに変え、今は元リベラルの政界の渡り鳥、いや、政界のコウモリ男こと細野豪志さんとはね・・・。吉田ゼミ塾長よ、リツイートする暇があったら、自分の意見を述べてみよ!
もう終わりにします。
じゃあどうすればいいんだ、対案を出せという橋下徹フリークの皆さんには以下のサイトを紹介しておきます。疾風自由日記のSさんのブログです。是非一読を。
4月13日『福島第一原発のまわりの中間貯蔵施設区域に汚染水貯蔵施設を作れ』
4月10日『トリチウム汚染水を120年保管すると、放射性物質は1000分の1に減少します』