融通無碍というか、懐が深いというか、ジャズはいろいろな楽器のコラボを可能にしますね。というわけで、今年の1枚は以下のCDです。リラックスして全身をゆだねることができる稀有な作品です。
ガンガバ=パリ
演奏しているのはこの二人です。左がジャン・フィリップ・リキエル、右がランシネ・クヤテです。輸入版CDなので届くのにアマゾンで約1ヵ月かかりました。
ジャン・フィリップ・リキエルはデザイナーのソニア・リキエルの息子さんです。1961年フランス生まれ。先天的に視力がなく、視覚記憶のない作曲家、編曲家、音楽家、キーボード奏者です。幼少より神童として音楽の才能を開花させますが、障害児であることをいたずらに取りざたされることを避けるため、デビューは1970年代後半まで保留とされたそうです。
ランシネ・クヤテは1968年、西アフリカのマリでグリオーの家系に生まれ、著名な女流吟遊詩人シラモリ・ジャバテを母に持ちます。バラフォン(西アフリカの木琴)演奏を父ナンコマン・クヤテから学びます。ちなみにグリオーとは、西アフリカの世襲制の伝統伝達者のことで、それぞれの家系により取り扱う楽器が限定されており、それぞれの演奏技法を肉親より受け継ぐ形をとっています。グリオーの存在は神聖化されており、一般の人は楽器に触れることが許されていないそうです。
内容紹介は以下の通りです。
盲目のキーボーディスト/ピアニスト、ジャン = ピエール・リキエルとバラフォン演奏の継承者ランシネ・クヤテ。その長年に渡る音楽共同制作と友情の日々の中で生まれたのが本作品である。電子楽器を多用せず、余分なものを極限までそぎ落とし、リラックスした中でハーモニーを重ねていった結果、この美しいデュオが誕生した。民俗音楽とジャズが持つ異なる二つの特性、そしてピアノとバラフォンという構造も音色も異なる二つの打楽器が、時に奇跡のような同一性を持ちながら、煌びやかなハーモニーを奏でる。快活で刺激的な相互作用と、たおやかで温かい調和を一度に味わえる奇跡の一枚。