良き敗者であることは難しい。国家であっても個人であっても同じです。日本国及び日本人は、勝者ばかりを重んじ、良き敗者がもつ影響力については無頓着です。敗者イコール負け犬というわけです。どうりで国も個人も深みがないはずです。敗戦に至る経緯を反省するどころか、敗戦を認めない輩がいまだに跋扈しているのですから。
私たちの社会は、本来、戦争ではないものを、受験戦争や経済戦争と呼び、勝利した者たちを称揚してきました。中でも最低・最悪のものが「歴史戦」です。歴史戦を戦う人間たちは「運も実力のうち」だと考え、権力者になびき、家庭環境や偶然によってハンディを背負っている人間を無視してきたのです。
現実は「実力も運のうち」なのです。それに向き合わず、ワインを飲みながら好き勝手なことをしゃべっている偽セレブ学者(三浦瑠璃氏)やエセ思想家(東浩紀氏)の精神を私は唾棄します。彼らはハーブ豚ではなく太ったワイン豚に過ぎません。
なんだか話がひどく脱線しました。今回のWBCで見せたチェコの監督および選手たちの態度を見て、良き敗者の持つ影響力について話すつもりでした。
以下、Full-Count編集部の記事より。
チェコの選手が随所に見せた清々しさは、ネット上でも話題となった。4回、佐々木朗希投手(ロッテ)の162キロが膝に直撃した7番エスカラは、悶絶するもすぐさま立ち上がって一塁へ。激怒してもおかしくなかったが、自分は大丈夫だとアピールするようにファウルゾーンで全力疾走をしてみせると、場内からは大きな拍手が起きた。その後帽子をとって謝罪する佐々木に対しても、事も無げに振舞った。
一塁を守っていた山川は、エスカラとのやりとりを明かす。「(佐々木が当てて)『すいません』って言って、ぼく英語は喋れませんけど、聞き取り的には『野球だからこれも起こるよ』ってこと言っていました」
貫いたフェアプレー精神。それが凝縮されたのが試合後だった。完敗したにもかかわらず、チェコの選手たちはベンチを飛び出て侍ジャパンに向かって拍手。さらにスタンドの方を向き、日本のファンにも感謝の意を示した。
印象に残ったシーンを問われると、ハジム監督は「本当に満席の会場でプレーできたこと。そして、この大会で試合ができたこと。感激の感情以外何もありません。そして日本のファンは、ファンの質としても世界一だと思います」と語った。(Full-Count編集部)
これはスポーツの清々しさやフェアプレーの精神の素晴らしさなどではありません。敗者が本来持つべき精神性というか、まさに知性が持つ影響力なのです。
日本人にもその影響力を示した人々がいました。二つとも8年前の記事ですが、是非お読みください。
・「なでしこジャパン」は、なぜ強くなったのか?
http://oitamiraijuku.jugem.jp/?eid=11
・国を守るということ ― 忘れられないシーン
http://oitamiraijuku.jugem.jp/?eid=22
上の記事は、今回のチェコの選手が思い出させてくれました。勝者の傲慢さではなく、まことに、敗者の態度が持つ影響力の大きさを感じたひとときでした。