今回は一週間前に観た映画『パラサイト・半地下の家族』について書こうと思っていました。とにかく面白い映画です。今の日本の映画界では決して作れない傑作です。疑う人はぜひご覧になって下さい。
ところで、わが国の王様の人品骨柄(人間の品格や知性)は、今や小学生にも見破られています。
訊かれたことには答えず、同じことを意味不明の日本語で繰り返し、ただ質問時間が終わるのを待つだけ。辻元清美議員の質問中に時計を見て「終わった」「終わった」と言い放つ。国会議員の背後には国民がいるという自覚すらない。自覚していたら、決して「人間としてどうかと思う」などとは言えないはず。それにしても、お隣の方のふんぞりかえった態度は何なんでしょう。
安倍首相が野党議員に向かって鬼の首でも取ったかのように「キューベー」「キューベー」と叫び「ウソつき」を連呼する様を見ていて、何だかかわいそうになってきました。人を見れば「ウソつき」呼ばわりするようになった責任は私にもあるからです。
ブログでも書きましたが、昨年の参院選の折、安倍首相が礒崎陽輔氏の応援のために大分入りしました。ウソだらけの演説を終えて、帰るかと思いきや取り巻きの応援団とハイタッチを始めたのです。私はその中に紛れ込み首相が近づくのを待っていました。
そして彼と目が合った瞬間、「安倍晋三、ウソつくな!」と私は叫びました。まさに魂の叫びだったのです、なんちゃって。見も知らぬ田舎者のオッサンから、50センチの至近距離で、一番聞きたくないセリフを吐かれ、安倍晋三氏の顔はひきつっていました。
山本太郎氏なら、その場で立ち止まり「私をウソつきと呼ぶ根拠を教えて下さい」と反問したことでしょう。しかし、安倍晋三氏にそれを期待しても無駄です。彼は官僚が書いた原稿がなければ、自分の言葉でしゃべれない人間ですから。以来、私から「ウソつき!」と呼ばれたことがトラウマになり、野党議員から言われる前に「ウソつき!」の先制攻撃をするようになりましたとさ・・・
自分の言葉でしゃべれない人間の末路はかくも哀れです。おそらく、私の想像ですが、安倍首相は秘書官兼補佐官である今井尚哉氏の存在なくしてはもはや何も決められないようです。いまの彼を支えているのは今井尚哉氏の次の一言です。去年の11月のブログから引用します。
今井「総理は日本の最高権力者なのですよ。その意味がお分かりですか。絶対に辞めないと決心すれば、総理を権力の座から引き摺り下ろすことのできる人間はいないのです。権力者の最大の弱点は弱気になることです。
三権分立など絵にかいた餅に過ぎません。人事権を掌握すれば、総理に逆らえる人間はいません。森友・加計問題でもお分かりでしょう。検察も裁判所も総理の意向を気にして、政権に弓を引くような捜査も出来ませんし判決も書けません。官僚は自分の地位を守るためなら公文書でさえも偽造するのです。
メディア対策は任せて下さい。彼らの弱点はすべて調べ尽くしています。彼らほど権力のいいなりになる連中はいません。『桜を見る会』も来年中止にすれば、国民は忘れます。スピン報道として中村格に沢尻エリカの情報を公にさせれば、マスコミは一斉にそれに飛びつくでしょう。それに、経団連の名誉会長をしている叔父の今井敬がホテル・ニューオータニの取締役ですから、この件はどうにでもなります。叔父と会う段取りはつけています。」
安倍「今ちゃん、スゴ〜イ。あったまいい〜。」
引用終わり。
『感想または身辺雑記』
http://oitamiraijuku.jugem.jp/?eid=615
そして、ついに安倍首相は禁じ手を出してきました。自分を逮捕する権限をもっている検察人事に手を突っ込んだのです。東京高検の黒川弘務検事長(62)の定年延長を閣議決定しました。黒川氏は安倍政権下で不起訴の連続の中枢にいた人物です。黒川氏が検察トップの検事総長に就けば、安倍首相は枕を高くして眠れるというものです。まるで中世の悪代官を地で行くストーリーです。
これは法治国家の破壊行為に他なりません。法治国家の反対が「人治国家」(つまり安倍政権が作り上げた国家のことです)であることすら知らない人間が総理大臣をやっているのですから、何でもありを覚悟しなければなりません。日本は押しも押されもせぬ三流国家になったということです。ゴーン氏が逃亡するのも無理はありません。
郷原信郎弁護士によれば、東京高検検事長の定年延長は、法律の根拠がなく違法だそうです。この人事は、「試合で負けそうな流れになってきたから審判を買収する」という脱法を白昼堂々とやっていることを可視化したのです。
森法相は国会で「管内で遂行している重大複雑な捜査公判に対応するため、私からお願いした。これ以上の詳細は差し控える」と発言しました。ゴーン氏が逃亡した際「日本の法廷で無罪を証明すべきだ」と言い放った無知な法務大臣ですから、露骨な安倍政権擁護に走ることは明らかです。
それとも、森法相の言う「管内で遂行している重大複雑な捜査」とは、IRの汚職捜査や河井夫妻の件を立件し、総理の脱法・買収を徹底的に捜査し、逮捕する準備を粛々と進めていることを指すのでしょうか。
今回の黒川氏を検事総長にするための人事ほど安倍政権の本質を可視化して見せた例は他に思い出せません。2013年8月、「法の番人」と呼ばれる内閣法制局長官に、内部昇格という慣例を破って憲法解釈の変更に前向きな外務省出身者・小松一郎氏を起用した時以上の衝撃です。
可視化して見せたといっても、新聞もテレビも裁判所も検察もすべて安倍政権の支配下に置かれ、忖度と保身の結果盲目になったのですから、「王様は裸だ!」と叫ぶことも不可能になったというわけです。
もし、黒川弘務氏が「この人事は、将来に禍根を残すばかりか三権分立を破壊するものだ。日本を三流国家に貶める人事に従うわけにはいかない。」と言い残し、法の定めに従って退職したらどうでしょう。日本が独裁国家に転落することを防いだ人物として歴史に名を残すかもしれません。しかし、太陽が西から昇ることがあったとしてもそれはないでしょう。そういうふうに教育されているからです。
最後に一言。安倍首相の知識不足(「募集」と「募る」は別の意味だそうです。これは知識不足というより、まともな教育を受けていないということでしょうね)、言動が乱暴かつ下品で子供じみていること、非論理的で何を言っているのか分からない等々、普通であればマイナス材料であるべき部分が、逆に安倍首相を支持する理由になっているのではないか。つまり、それが選挙に行かない過半数の有権者のメンタリティーなのではないかと考えると、思い当たる節があるので、なんだか怖くなってきますね。
今回も読んで頂いた方に感謝いたします。黒川氏については2016年のブログですでに書いています。時間が許せばお読みください。
『空洞化した人格』
http://oitamiraijuku.jugem.jp/?eid=219