多くの方はすでにご存じでしょうが、柔道金メダリストの「やわらちゃん」こと谷亮子参院議員(40)が、7月の参院選に生活の党と山本太郎となかまたちからは出馬せず自民党の比例区から出馬することを表明しました。
もともと民主党の参議院議員として当選し、その後、野田政権の下で、消費税大増税を巡り、小沢一郎氏とともに民主党を離党し、生活の党の結成に参加していました。この経緯からすれば、谷氏にとって、自民党は一番対極にあった政党のはずです。
「生活の党」から出馬したのでは当選できそうにないので「与野党問わず他の党から立候補の要請があれば『柔軟な姿勢で対応したい』と前向きな姿勢を示している」とのことでした。それにしても、「与野党問わず」って、一体何のことでしょうか。それが「柔軟な姿勢」なのでしょうか。
自分が選挙で当選できるなら、どの党でも構わないと、国会議員が堂々と述べているのです。さすがに柔道の金メダリストだけのことはあります。変わり身の早さに脱帽するしかありません。
谷氏は、マックスウェーバーの『職業としての政治』を読んだことがないのでしょう。政治家を志す人なら、一番最初に読むべき本です。昔は、自民党員の中にもこの本を読んでいる人がいました。
一方で、彼女とは対照的な生き方をした、もう一人の金メダリストがいます。6月5日のブログで紹介したモハメド・アリです。http://oitamiraijuku.jugem.jp/?eid=179
彼は1960年のローマオリンピックのボクシング競技(ライトヘビー級)に出場し、金メダルを取ります。自伝によれば、その後帰国した時、黒人だという理由でレストランの入店を拒否されたため、金メダルを川に投げ捨てます。金メダリストとして栄光の中で生きるのではなく、人間として不当に差別されたことと闘う人生を選択したのです。
ベトナム戦争の際、「彼らには恨みも憎しみもない。殺す理由もない」と徴兵を拒否した結果、世界タイトル剥奪や試合禁止等様々な圧力が加えられました。しかし、それに屈せず、米国政府と長期にわたって争い、無罪を勝ち取ります。
その彼が『Stand By Me』を歌っています。「オレのそばにいてくれ、そしてオレを支えてくれ」と。孤立無援の状況の中で、彼はさぞ孤独だったことでしょう。それがこの歌に表れています。うまいとか、へたとかいう問題ではありません。聴く者の心を打つのです。
彼が金メダルを川に投げ捨てたとき、私が彼の父親だったら、息子を強く抱きしめて次のように言うでしょう。「お前を誇りに思う。お前を決して一人にはしない」と。