英語に自信を持っている高校生の皆さん、以下の文章を一読して意味がわかりますか。
She put on the wedding dress the diamond ring he bought for her in Paris.
「なんだこんなの簡単だよ」という人は、「A・B 相関」が分かっているでしょうから、以下の記事を読む必要はないかもしれません。でも、まあ、ちょっとお付き合い下さい。
She put on the wedding dress は、「彼女はウエディングドレスを着た」という意味だな、あれ、でも次に the diamond ring が来ているけど、どうなっているんだろう?と考えた人は、脈がありますね。
次に、he bought for her in Paris は関係詞節で the diamond ring を限定している。これは間違いなさそうだ。でも、the wedding dress と the diamond ring はどんな関係にあるんだろう。そうか、「彼女はウエディングドレスを着て、彼がパリで買ってくれたダイヤの指輪をはめた」という意味か、楽勝!なんて思っている君、ヤバいですよ。the wedding dress と the diamond ring の間に and がないですからね。これではいざという時に慌てて「肉離れ」を起こします。
ここで思い出してほしいのが、He put the book on the desk. という単純極まりない文です。どこが単純かというと、「彼は置きました、その本を」と読んで、うんうん、なるほど、と思う人はいないということです。情報が完結していません。普通は「どこに置いたのか」と考えますね。それを受けて on the desk が次にくるわけです。この on the desk は the book にかかっているわけではありません。それだと、「彼は机の上の本を置いた」となって、どこに置いたのかさらに説明する必要が出てきますね。
そんなことくらいわかってるよ、何が言いたいんだ、と思っているあなた、もう少しお付き合い下さい。なぜなら、これこそが英語のあちこちに出没する「A・B 相関」の原型なのですから。
ところで、on the desk というカタマリは put という動詞が必然的に要求したのですね。 on the desk が put を要求したわけではありません。この on the desk を副詞句と言います。場所を表わしているわけです。
例えば、He studied English harder that summer.という文の harder も that summer も副詞です。「彼は英語を勉強した、(どのように?)以前より熱心に、(いつ?)その夏のことだけど」となります。この、「どのように、いつ、どこで、なぜ」を述べるのが副詞です。
英語の How, When, Where, Why に相当します。副詞と聞いただけで頭が痛くなる人のために説明しました。もちろん副詞はこんなに単純なものではありません。副詞はフグの肝のようなもので、美味しいのですが、処置を誤ると死ぬこともあります。美しいバラにトゲがあるのと同じですね。美しい女性には・・・いや、やめておきましょう。とにかく副詞が分かればあなたの英語力も一人前と言えるのです。
何の話をしていたかというと、そうそう、「A・B 相関」の話でしたね。He put the book on the desk. という文をもう一度思い出して下さい。
動詞 putに続く、the book on the deskを 動詞 putの「A・B 相関」と言うのです。つまり、図示すると次のようになります。
put the book <on the desk>
A ・ B
そしてこの B にあたる <on the desk> は副詞なので、英文の中を比較的自由に移動します。日本語でも同じですよね。「ねえねえ、昨日のことだけどさあ、あいつがね…」と言ってもいいですし、「あいつがさあ、なんと彼氏にコクッたんだって、昨日のことだけどさあ・・・」と言っても、意味は変わりませんね。副詞は自由者、浮気者と覚えて下さい。
ということは、put <on the desk> the book という語順になってもいいということです。そんなことして何の意味があるの、と思っている人もいるでしょうね。僕もそう思います。でもこれならどうでしょう。
He put <on the desk> the book our teacher recommended to us yesterday.
ここで、そういうことか!と気づいてくれる人もいるかもしれませんね。「A・B 相関」の A = the bookに修飾語がつくと、B =<on the desk>が前に出て、語順が入れ替わるのです。可能性として以下の3通りがあります。
(1)He put the book <on the desk>
(2)He put <on the desk> the book 〜
(3)<On the desk> he put the book 〜
さて、ここで最初の文に戻りましょう。もうそろそろお分かりでしょう。
She put <on the wedding dress> the diamond ring he bought for her in Paris.
この英文は、3パターンの(2)番目ですね。したがって意味は、「彼女は、彼がパリで買ってくれたダイヤの指輪をウエディングドレスの上に置いた」となります。これを、僕は「A・B 相関」と名付けました。そして、「A・B 相関」には3パターンあることにも注意を促しています。
「ライオンに追われたウサギが逃げ出す時に、肉離れをしますか?準備が足らないのです」というオシムの言葉をかみしめたいものです。以上のことをしっかり理解した上で、前回の東大の問題を見て下さい。どうです、一見すると難しそうな英文に構造が見えてきたのではありませんか。続きは次回やります。ここまで読んでくれた皆さん、お疲れ様でした。