そもそも経済的にゆとりのある家庭でなければ、私立大学の医学部を志望することはできません。ましてや受験など論外です。多くの人が知っているので話題にもなりませんが、私立大学の歯学部も同じです。
ブログで何度も言及してきましたが、日本の私立大学はもはや大学ではありません。学生とその保護者を ATM と勘違いした錬金術師たちの巣窟と化しています。そこに政財界の「大物」が絡んで、本来なら民主主義的手続きによって決めるべき学長選挙を牛耳っているのです。
むろん国立大学も、文科省を通じて政財界の軍門に下っています。国の言うことを聞かなければ、蛇口を締めてカネの流れを止めるぞ、と脅迫されて素直に従っているのですから。「役に立たない」文系学部を廃止する方針を打ち出したりするのもその流れです。
要するに、彼らは学問を「生産性」と「錬金術」の観点からしか見ていないのです。「生産性」とは財界の意向に沿うということであり、「錬金術」とは天下り先を確保することです。それを隠蔽するために屁理屈にすらなっていない屁理屈をこねます。
13日付けの朝日新聞朝刊によると、日本大学の医学部は、一般入試で繰り上げ合格者を決める際、医学部卒業生の子供計18人を優先して合格させていたとのことです。文科省から「不適切だ」と指摘されたことに、高山忠利医学部長は「入学意識が高く、大学の維持発展に資する可能性が高いためだった」と説明しています。しかもそれは「私立大学の裁量の範囲内だ」と言うのです。
「はあ〜、マジかよ?」という言葉がぴったりですね。「裁量の範囲内だ」という言葉は便利です。要は「入学者の選別は自分達が自由に決めていいのだ」と言っているのです。思えば、フェイクサイトを立ち上げて「許容範囲だ」と自分で勝手に判断していた大分市田尻にある学習空間LのK塾長は時代の先端を走っていたのですね。
ところで、「入学意識が高い」とは、どういう意味でしょうか。「学習意欲が高い」という言葉なら聞いたことがあるのですが・・・。具体的に言い換えてみましょう。
「パパがいつも言ってるように、ガツガツ勉強するのは貧乏人のやることでしょ。そんな勉強はまっぴらだよ。勉強は合格してからするから、なんとか医学部に合格させてよ〜。友達はみんな親の力とか金で合格してるよ。安倍首相も真っ赤なスポーツカーに乗って成蹊大学に通っていたというじゃない。とにかく合格したいんだよ!」というようなバカ息子を、日本大学の医学部は、「入学意識が高」いと言うのでしょうね。全国津々浦々でネトウヨ医師が跳梁跋扈しているのもうなずけます。
さらに「大学の維持発展に資する可能性が高い」とは、寄付金のみならず、国家試験にかこつけた特別講座や進級に際してたっぷり金を払ってくれそうだからという意味でしょう。要するに、いいカネづるになるということです。
また同じ日、「文部科学省から、入試で性別や年齢によって差をつけていることが疑われる」と指摘された聖マリアンナ医科大は「属性による一律評価は行わず、受験生を個々に総合評価している」と反論し、問題はないとしています。
「属性による一律評価は行わず」とは「医師になる最低限の能力が備わっているかどうかを、公平な入学試験で判断しない」という意味でしょう。「公平なテスト」を「一律」という言葉を使って欠陥があるように見せかけ「個々に総合評価している」と言うのです。
「個々に総合評価している」とは、密室での談合を意味します。「一人一人の人脈・金脈を考慮して、自分たちに利益をもたらしてくれそうな受験生(の保護者)をピックアップして合否を決める」と言っているのです。ものは言いようですね。
私はこういう事実を聞いても驚きません。ブログで何度も指摘してきました。例えば2年以上前に書いた以下の記事をご覧下さい。
「早稲田大学のAO・推薦入試について」
http://oitamiraijuku.jugem.jp/?eid=136
「民主主義は大学の門前で立ちすくむ。−慶応大学の学長選挙について。」
http://oitamiraijuku.jugem.jp/?eid=427
当の早稲田大学は、「属性による一律評価は行わず」、ひたすら推薦入試枠の拡大へと舵を切っています。その一方で、入試では「論理的思考力を試す」と言っているのですから、これほどの茶番もありません。
前にも書いたように、国民国家が空洞化し、アメリカ資本と一部の大企業が支配するコーポラティズムが国家の中心に居座っているのですから、当然の帰結です。この国は、大学も高校も義務教育すら株式会社化・民営化に向けてまっしぐらに突き進んでいます。その象徴が、山本太郎が言うように、利益相反行為を屁とも思わない竹中平蔵であり安倍晋三なのです。
ブログで書いてきたことがことごとく現実化しています。もはや手遅れでしょうが、この国を愛する者として、無抵抗で座視するわけにはいきません。来るべき経済恐慌と大地震、それに続く原発事故に備えようと思います。