孤独とは自分で自分に話しかけることです。言葉がそれを可能にしました。孤独は人間の特性です。動物が孤独などということはあり得ません。
言い換えると、誰もが「私」であるということです。そして誰もが「私」であるからこそ、人と人は分かりあえないという一点において分かりあうしかありません。何もレトリックをもてあそんでいるわけではありません。私はこの一点を巡ってブログを書いてきました。しかし、もうそろそろ終わりにしなければなりません。言葉が前提としている能力の自壊現象がとどまるところを知らないからです。
言葉は相手の身になる能力、相手と入れ替わる能力を前提にしています。この前提を理解する能力を育むのが教育であり、政治なのです。
政治?そんなバカな、と思われるでしょうか。政治とは自分の会社や組織に利益をもたらしてくれる集団や教団とつながり、ある時は平伏し、ある時はその力を利用する営みだと考えれば、そうかもしれません。
リアリストを自称し、「世の中、そんなものさ」と居直って見せる人間たちは、言葉の本質が相手の身になる能力、相手と入れ替わる能力であることを理解していません。しかし、政治は言葉の問題なのです。
すべての政治は言葉による対話から始まります。戦争で殺し合っている敵同士ですら、停戦のためには話し合います。いかなる異論であっても対話をすることこそ政治家の仕事なのです。しかるに、政治家が対話をバカにし、言葉を信じなくなった時点でその国は滅亡へのカウントダウンを始めることになります。
私は教育の末端の、そのまた末端にいるおかげで、どこに希望をつなげばいいのかを考えることができました。
8月31日のブログで、ある国の文化的・政治的成熟度を見るとき2つの指標があると述べました。
1:若者が政治的意見(反政府的意見のことです)を表明する自由すなわち民主主義国に不可欠な表現の自由を行使しているか。
2:時代状況を抉り自国の負の歴史をテーマにする映画を製作する自由があるか。
そして結論です。希望をつなぐべき若者はいなくなった、ということです。若者は既成の価値観に異議を唱えてこそ若者です。しかし、今はただひたすら親の言う通りに受験勉強に励み、多様なアプリが作り出すVR空間の中で自足しています。
ブログで取り上げた佐藤ママは、若者の知性を破壊する大人の代表です。幼少のころから子供を受験専用の培養器の中に閉じ込め、下劣な出版社や同種の親たちから承認されることを頼りに、参考書や塾情報を発信し、子供たちの時間を管理することこそが親の仕事だと胸を張っています。
つまり、日本の若者は親から心配されるだけの存在になったのです。親はただひたすら子供の将来を思い、その利益の最大化につとめています。
私の言っていることは時代錯誤の妄言でしょうか。違います。世界の中で日本だけはこれまでと同じような社会が続くと信じて、コップの中、いやスプーンの中で暮らしているのが比較的裕福な家庭の実態です。その結果、勉強とゲームと音楽が若者の生活を駆動させるものとなりました。スマホ一つで幸せになれるというわけです。
しかし、目と鼻の先の香港の若者は違います。それが以下の写真です。
ついに自由を求める香港デモ隊のテーマソングが誕生しました。
香港の抗議活動を続ける人々の気持ちを代弁した歌詞と荘厳なメロディーが支持され、香港各地のデモで歌われるようになりました。
作者の男性は「自由や平等などの権利が奪われている。香港に輝かしい未来が来てほしいという願いを込めた。」と話しています。
新学期が始まった2日、逃亡犯条例案を政府に撤回させるために、香港の中高生およそ4000人が授業をボイコットしてデモを行いました。参加した高校1年生(16)の男子生徒は「僕らと同じ若者が、警官に殴られてケガをしている。ひどい」と怒りをあらわにしました。
政府は新学期が始まればデモは収束に向かうと期待していましたが、生徒たちは授業をボイコットして、その期待を打ち砕きました。
この日の集会のテーマは「未来がないなら、学ぶ必要もない」でした。高校3年生の女子生徒(18)は、香港返還から50年は守られるはずの「一国二制度」が次第に骨抜きにされ、香港が中国に呑み込まれようとしていると感じて次のように言います。「大人になった時、香港がどうなっているか怖い。自分の将来のためにも抗議はやめない」と。
そして9月4日、香港政府トップの行政長官が逃亡犯条例案の撤回を表明しました。日本の中高生の皆さんは逃亡犯条例案の中身を知っているでしょうか。調べる気のない人は、私のブログを読むのを止めて受験勉強に専念することです。
以下は
周庭 Agnes Chow Ting さんのツイッタ―からです。
条例の撤回は喜べません。遅すぎました。 この3ヶ月間、
8人が自殺。
3人が警察の暴力によって失明。
2人がナイフを持つ親北京派に攻撃され、重傷。
1,000人以上逮捕。
100人以上起訴。
怪我した人は数えきれないです。
私たちは、5つの要求を求めています。これからも戦い続けます。
9月10日の彼女のツイッタ―によれば、「昨日の朝、200校以上の中学、高校の生徒が学校の前で手をつないで「人間の鎖」を作り、抗議活動への支持を示しました。」とのことです。
お前は日本の中高生にデモをけしかけているのか、と考える人もいるかもしれません。そうではありません。日本の中高生がデモをする時は、国民的な規模でデモが起こっているはずです。そしてその時は、もはやすべてが手遅れになっている時です。それくらいの認識は持ってほしいと言っているのです。
安倍政権は、国民を税金を絞り取るだけの存在だと考えています。ここ1年を振り返っただけでも明白な事実です。そして今回の内閣改造。文部科学大臣に誰を据えているか見ただけでその本質がわかります。もちろん、台風被害で苦しんでいる人のことなど眼中にありません。彼らの発する言葉は、相手の身になる能力、相手と入れ替わる能力を根底から欠いているのです。