このブログは、意に反して政治的な話題が多くなっています。本来私は政治からは距離をとっていたいし、できれば政治的な話題も避けたいと思っています。
しかし、どんなに個人主義を気取ったところで、私たちは国家から恩恵を受けています。そのことに無自覚であっていいわけがありません。国家の枠組みがあればこそ、私たちは安心して毎日の暮らしを営むことができるのです。
しかしそうであればこそ、現行憲法に基礎を置く国民国家が、反動的で、偏狭で、独善的な歴史意識に染め上げられた政治家によって葬り去られる可能性が出てくれば、それに抵抗しないわけにいきません。
なるほど、戦後民主主義と現行憲法に基礎を置く社会は未成熟です。しかし、その欠点をあげつらって葬り去ろうとする勢力はもっと未熟で、お話にならないくらい無知で論理性を欠いています。その代表が安倍首相と自民党であり、橋下徹という政治家です。このことについては8月3日のブログ『ヤクザの友情−安倍政権の本質』と7月2日の『感情統治とファシズム』ですでに指摘しました。
橋下徹というヤクザ政治家を支えている二つの原理があります。一つは「民主主義は感情統治」という彼の信念であり、二つ目は「民主主義は多数決」という小学生並みの認識です。嘘の上に嘘を重ね、前言撤回を何とも思わないその無節操ぶりは、彼の信念と認識からすれば当然の結果です。
前回の選挙で維新の党が多数の議席を獲得したのは、非民主、非自民の票を獲得したからです。要するに漁夫の利を得たということです。国民は民主党政権の頼りなさに失望し、自民党と新興勢力の維新の党に投票しました。その結果、自民党は公約でTPPに反対していたにも関わらず、多数を獲得するや否や公約を破棄し、それどころか違憲の集団的自衛権の行使も国民に信任されたのだと強弁したのです。自民党は昔の自民党ではなく、『日本会議』に乗っ取られて変質した自民党であることに国民は気づかなかったのです。
橋下徹というヤクザ政治家は、「大阪都構想」を問う住民投票で、「たとえ一票差でも否決されれば政治家を辞める」と公言して選挙戦に臨みました。その結果敗北した5月17日の夜、何と言ったか。
「市長任期が終われば政界を完全に引退する。政界に復帰することはない。また2万パーセントないと言わせたいんですか」と記者会見の席上で言ったのです。その強引な手法へ批判が集まったことに「反省」もしたはずです。私はその時、橋下徹と安倍政権の野合が消えて、ほっと胸をなでおろしたものです。わずか3ヶ月前の出来事です。
私は「住民投票で、たとえ一票差でも否決されれば政治家を辞めると」と彼が公言した時、ああ、また彼の虚言癖が出たなと思いました。「たとえ一票差でも否決されれば」という極端な物言いが、大阪という政治的風土の中では、潔いとか、退路を断ったとか、おおむね好意的に評価されるのです。
しかし、彼がまともな政治家なら、1票差で否決された民意をその後の政策の中で何とか生かしていく方法を探るはずです。しかし、それをせずに、潔い政界引退表明にすりかえました。一番困難な仕事から逃げて、またぞろ「民主主義は感情統治」という信念のもと、無知蒙昧な大衆を味方につけて、復権を狙っているなと私は感じました。
そもそも彼が大阪府知事選に立候補した時から、そのパフォーマンス、ことばの使い方を見て、私は彼を信用していませんでした。メディアをはじめとして世間は、彼を改革の旗手、既得権益を打破してくれる政治家として期待していました。政治に対する認識の甘さを見せつけられて、私の悲観主義はますます亢進せざるを得ませんでした。
そこへ持ってきて今度の騒ぎです。維新の党の柿沢問題に端を発して(本質は単なるヤクザのイチャモンです)松井、橋下が党顧問を辞任。橋下は27日に離党した際、維新の党幹部にメールで「党を割らない」と伝えたその翌日に新党結成の話。今年12月の市長任期満了を持って政界完全引退と言ったにもかかわらずです。
これが最後の仕事?嘘でしょうね。政治家から全面撤退すると言った橋下に対して、「政界復帰は十分ある」とする松井大阪府知事。橋下は自分の口からは言えないので、松井というヤクザの子分に言わせているのです。
ここで忘れてはならないのが、6月14日の安倍首相・菅官房長官と橋下・松井悪役コンビの都内の高級ホテルでの密談です。今回のシナリオはそこですでに決まっていたとみるべきでしょう。橋下・松井の悪役コンビは、反自民ではなく自主憲法制定を悲願とする安倍政権の補佐役として利用されているのです。
しかし、ここは利用されるふりをして安倍政権の中枢に食い込み、あわよくば総理大臣の椅子を狙おうとするのが、橋下徹というヤクザ政治家のしたたかさです。2020年、東京オリンピックの時の総理大臣は橋下徹という、誰一人予想すらしないグロテスクな結末を、私の妄想だとして笑い飛ばしてほしいものです。