これまで『この人を見よ!』というタイトルで11人の人物を取り上げてきました。すべて私が尊敬できる人たちばかりです。どんな仕事に就き、どんな大人を目指せばよいのか迷っている中高生の皆さんに是非読んでもらいたいですね。
ところで、今回の『この人を見よ!』は、若い人たちにとって、反面教師となる人物をとりあげました。その人物とは横浜市教育委員会の岡田優子教育長です。なにはともあれ、こういう人間にだけはなってほしくありません。
そう判断する理由は以下の通りです。
福島第一原発事故で福島県から横浜市に自主避難した中学1年の男子生徒がいじめを受け、150万円を払わされていた問題で、教育長の岡田優子氏は20日、市議会に「関わった子どもたちが『おごってもらった』と言っているから、いじめには当たらない」と報告し「第三者委員会においても、金銭授受についていじめとは認定できないという結論になっており、新たに認定し直すということは難しい」などと発言した。
生徒側の代理人によると、生徒は同級生らから「賠償金あるだろ」などと言われ、ゲームセンターで遊ぶ金など総額約150万円を支払わされた。この問題を調査した第三者委員会は「いじめから逃れるためだったと推察できる」としたが、「おごりおごられ行為」をいじめとは認定しなかった。
その後、林文子横浜市長は25日の定例会見で「子どもに寄り添った発言ではなかった。大変申し訳ない」と謝罪した。
2017年1月25日
http://www.asahi.com/articles/ASK1T6FQ1K1TULOB016.html
岡田氏は「第三者委員会」にゆだねなければ、小学5年生が同級生に150万円も払っていることを「普通ではない、異常だ」と判断出来ないのでしょうか。この生徒は度々、「おごれ」と要求されたので、親に隠れてカネを持ち出し、「脅し」に応えていたのです。何度も言いますが、見ようとすれば誰の眼にも見える明白な事実があるのです。私はそれを書いているだけです。教育長ともなれば、「誰の眼にも見える明白な事実」を「見ようと」しなくなるのでしょう。「見ようと」しないことで、岡田氏は何を守ろうとしたのでしょうか。
第三者委員会の報告通り「おごってもらったのだから問題ない」のでしょうか。大人でも150万円もおごったりしません。岡田氏は、いじめた側の子どもの声を一方的に聞き届け、「問題なし」と結論付けたのです。
そもそも、いじめた側が素直に「脅してカネを払わせた」と言うでしょうか。「おごってもらっただけ」と言うに決まっています。
こうした不公正な判断により、避難してきた生徒は「二重のショック」を受けたはずです。福島への「差別」と「間違いを間違いだと認めることのできない」学校や教育委員会など、大人への失望感、不信感です。私は「もし自分がこの少年だったら、この社会をどのように見るだろうか、どう行動するだろうか」と考えてこの文章を書いています。
それにしても、どういう人生を送れば、岡田氏のように人格が空洞化し、まともな判断力を持たない大人になれるのか。そして、横浜市の教育長という地位につけるのか。逆に、人格が空洞化し、まともな判断力を失った人物でなければ、教育長という地位にはつけないのか。私は今度の事件を、中央、地方を問わず教育行政のトップに位置する人間たちに起こっている、道徳の自壊現象の表れだと考えています。この件については、また改めて述べます。
私は2年前のブログ『この人を見よ!− 元国会事故調委員長・黒川清氏』
http://oitamiraijuku.jugem.jp/?eid=45
の中で、次のように書いています。(ブログの動画は是非見てほしいです。)
「黒川氏は自分のことばで福島第一原子力発電所の事故の本質を語っています。この国には、氏のように自分のことばで発言できる大人の何と少ないことか。これだけ見ても、日本の教育は総体として社会的な責任を自覚できる人間を育てるのに失敗したのだと断言せざるを得ません」と。