高校生の皆さん、こんにちは。
前回の続きです。残っていた重要部分の解説をします。英文は以下に挙げておきます。
Creating curricula that help children do what they feel like is necessary in their lives while still teaching them how to reason and communicate and do mathematics that is needed in their lives are important.
もう2〜30回は音読したでしょうか。短文なので覚えてしまったことでしょう。間違いの箇所は2か所でした。likeは不要、are は is に訂正します。小石のような単語ですが、発音したとき違和感がありましたか。そうなるまで読み込むことが何より大事です。
今回は that help children do の後ろの what they feel like is necessary in their lives の like がなぜ不要なのか解説します。
基礎の基礎から説明してみましょう。まず次の文を見て下さい。
1.What color do you like?
2.What did it look like?
この二つの文の like の違いはわかりますね。1は動詞、2は前置詞です。「働きが違えば意味も違う!」でしたね。1は「何色が好き(何色を好むか)」2は「それはどんなものだったの(どんなふうに見えた、何に似ていた)」という意味です。2は友達が「昨夜、UFOを見たよ!」と言った時のあなたのセリフです。
では、この2文の共通点は何でしょうか。2つの like がともに目的語を取るということです。1の like は他動詞で what color を、2の like は前置詞で what を目的語にとります。目的語ですからそれぞれに「を」「に」を付けます。2は It looked like a cigar.(葉巻みたいだったよ)のように答えます。日本語では「何色が好き?」と言いますが、これは「〜を好き?」というのが不自然に聞こえるという日本語の都合です。英語の発想では、「何色を好むか?」になります。
つまり、目的語は「他動詞の目的語」か「前置詞の目的語」を意味します。しつこいようですが、1の what color は「他動詞の目的語」、2の what は「前置詞の目的語」になっているということです。
他動詞とか前置詞とか目的語とか聞いただけで頭が痛くなる人は、英語の上達は望めません。一生、ブロークンイングリッシュで旅行や買い物を楽しんで下さい。そういう人には、「聞き流すだけで英語が話せるようになる」教材が準備されています。それに、ブログでも紹介しましたが、人工知能による携帯自動翻訳機がスタンバイしています。
さて、以上のことを押さえて、do what they feel like is necessary in their lives の中の like の働きを考えてみましょう。feel が動詞なので like は動詞ではなく前置詞です。では「前置詞の目的語」はどれでしょうか。 whatでしょうか。その可能性もありますね。
しかし、その場合は、What do they feel like?「やつらは何を飲みたがっているんだ?」の意味になります。 They feel like wine.「ワインを飲みたがっているのさ」というような答えになりますね。文脈から考えてこれはありません。「子供たちが人生において飲みたいと思っているものをすることが必要だ」などと、わけのわからない訳を考えてパニックになるのが落ちでしょう。
要するに、like には目的語がないのです。だから like は削除するしかありません。
では、like を削除した後の、do what they feel is necessary in their lives はどんな意味になるのでしょうか。頭が痛くなってきたですって?ここは大学入試英語の重要ポイントです。なるべく簡単に説明します。
「君は自分が正しいと思うことをやれ」を英語で言うとどうなるでしょうか。
1.Do what you think is right.ですね。
これは You think (that) X is right.「君はXが正しいと考えている」という文中のXを先行詞を含んだ関係代名詞 whatにして文頭に出し、残りを修飾構造にしたものです。こうして what you think is right. というカタマリが出来上がります。つまり「君はXが正しいと考えている」を「君が正しいと考えていること」という抽象的な言い回しにしたのです。
でもこれは英語ではふつうのことです。I bought the CD at the shop.「ぼくはその店でCDを買った」が the CD I bought at the shop.「ぼくがその店で買ったCD」になるのと同じ理屈です。
難しいですか? よく考えて下さい。
一つ練習してみましょう。
「僕が起こると考えていたことが本当に起こった」を英語にしましょう。
2.What I thought would happen really did.
となります。もちろん最後の did は happened の代動詞です。
ここで注意しておくことがあります。whatには2つの「働き」があります。「外の働き」と「内の働き」です。
1.「外の働き」とは名詞のカタマリを作ることです。すなわち文中で主語、目的語、補語になる。
2.「内の働き」とは what を含むカタマリの内部で主語、目的語、補語のどれかの「働き」をする。
上記1の例文を見て下さい。
Do what you think is right.
この what は名詞のカタマリを作って Do の目的語になっています。つまり、「君が正しいと思うことをせよ」になる。同時に内部では is の主語になっています。したがってこの what は主格です。
上記2の例文を見て下さい。
What I thought would happen really did.
what は名詞のカタマリを作って did の主語になっています。つまり、「僕が起こると考えていたことが起こった」になる。同時に内部では would happen の主語になっています。したがってこの what は主格です。
ふう〜、ややこしいですね。疲れましたか。では最後に
help children do what they feel is necessary in their lives
に戻りましょう。
下線部が今までと違って見えていることでしょう。この what は do の目的語になる名詞のカタマリを作っています。「外の働き」ですね。「内の働き」は is necessary の主語になっています。『子供たちが人生で必要だと考えていることをする』になる理屈がわかったでしょう。
help children do what (they feel) is necessary in their lives のように they feel を括弧でくくるとわかりやすくなります。
全文訳をしておきましょう。
「論理的に考えたり、コミュニケーションをしたり、人生で必要な計算をしたりすることを教える一方で、子供たちが人生で必要だと思うことをするのを手助けするようなカリキュラムを作ることが大切だ」となります。
なぜ、「論理的に考えたり、コミュニケーションをしたり、」から訳が始まるのか、わけ分からん、と思っている人もいるでしょうね。僕もそう思います。この日本語訳は「て」「に」「を」「は」によって、かろうじて英語を日本語の論理に変換しているからです。
ちなみに、上の全文訳の「て」「に」「を」「は」を変えてみましょう。
「論理的に考えたり、コミュニケーションをしたり、人生で必要な計算をしたりすることが教える一方で、子供たちを人生で必要だと思うことはするのが手助けするようなカリキュラムを作ることに大切だ」
どうでしょう。この日本語を英語にすることができるでしょうか。無理ですね。皆さんはこのことから何を学んだでしょうか。長くなったので今日はここまでにします。