コメントありがとうございます。コメント欄では余裕がないので、この場を借りて返信いたします。
私は子供の魂に対する想像力がこれほど貧困な母親を知りません。「佐藤ママ」が最も罪深いのは、「将来のため」という口実で、子供から「時間」を取り上げている点です。何度も書いてきましたが、時間や記憶はその人の人生そのものです。たかが東大医学部に合格させるために、子供からかけがえのない子供時代を奪い取っているのです。
しかもそれが子供の将来のためだと信じ切っています。こうなるともはや歯止めが効きません。大学合格までは恋愛禁止を申し渡し、テレビは見せず、志望理由書も自分で書いたものを子供に写させます。「こんなことはしたくないけど、これがあなたのためなのよ」というのは、モラルハラスメント以外の何ものでもありません。世の中を生きづらいものにし、児童虐待を生み、犯罪と暴力を生み出すのはまさにこういった発想だと思います。
おそらく「佐藤ママ」に私の批判は届かないでしょう。なぜなら、「結果を出す」ことで周囲を黙らせようとする人間は、無知で硬直した精神を持つ人間たちから支持され、力に対する共感を呼びさますからです。彼らにとっては「結果を出す」ことが何よりも大事で、プロセスは問わないのが常です。しかし、教育とは結果よりもプロセスに寄り添うもののはずです。人間の、特に子供の幸せは、目的地にではなくそこにたどり着くプロセスの中にこそあるのです。そうではありませんか。
私は「佐藤ママ」や「ビリギャル本」を持ち上げるメディアの登場で、この国の教育は最終段階に入ったと思っています。これからは、「結果を出す」ことに居直った、荒廃した精神の末路がいたるところで見られることでしょう。
一つだけ具体例を挙げておきます。
「全国学力テストの結果で、大阪市が政令市の中で2年連続で最下位だったことを受け、吉村大阪市長が激怒しました。
吉村市長は、会見で「私自身は非常に危機感を感じています」「万年最下位でいいと思うなよ」と述べました。今年度の全国学力テストで、大阪市は小6・中3ともに2年連続で政令市で最下位の成績でした。これを受け、吉村市長は来年度のテストから学校ごとに数値目標を設定し、達成できたかどうかを校長・教員の人事評価や給与に反映させるとの考えを明らかにしました。今後、市の教育委員会などとも議論して決めるということですが、全国学力テストの結果を教員の人事評価に用いるのは、全国でも例がないということです。」(平成30年8月2日:大阪市ホームページより)
話を戻しますが、ブログでは、村上春樹氏や宮崎駿氏を引き合いに出しました。村上氏は優れた文学的な比喩を通じて、宮崎氏はアニメによって、人間の無意識に影響を与える術を知っていると思ったからです。
子供が無意識の世界を育むべきときに、親があれこれ具体的な指示を出すことは、特に受験を効率的に勝ち抜くためのクソのような指示の場合、魂の休息場所である無意識の世界を破壊することにつながると私は思っています。
大げさなようですが、それは世界の崩壊へとつながっているのですね。世界は子供たち一人一人の魂が寄り集まって創られている、大きなやわらかい綿菓子のようなものですから。
何やら取り留めのない話になりそうなのでやめにしたいと思います。名もなき一教師さんのおかげで、ブログを読み返し、わずかながら思考が深まっていることを確認することができました。ありがとうございました。
最後に、中高生の皆さんのために、時間がどれほど大切なものか気づかせてくれる本を推薦しておきます。今の世の中の支配的な価値観に対する痛烈な批判が込められています。「佐藤ママ」はこの物語の中に出てくる「時間貯蓄銀行」の「灰色の男」たちそのものです。残り少なくなった夏休みの思い出にしてもらえたらうれしいです。
※ミヒャエル・エンデ『モモ』(岩波書店)
以下は私のブログです。
『こどもの魂はどこで育つのか』
http://oitamiraijuku.jugem.jp/?eid=174