論理的に考えることと、ただ理屈っぽいことは全く別のものです。やっかいなのは論理的に考えているつもりでも、世間の受けを狙った屁理屈にしかなっていないことに当の本人が気づいていないことです。
具体例を挙げましょう。以前、「桜を見る会」をめぐって爆笑問題の太田光氏と大橋巨泉氏がテレビで論じあっていたことがあります。「桜を見る会」に出席しないという大橋巨泉氏に対して太田光氏が投げかけた言葉がひっかかったのです。
彼は「政策が違うからって会わないっていうのは、あまりにも幼稚じゃないですか。」と言ったのです。そして自分は安倍さんと考えてることは全然違うけれど、招待されたら会うと言いました。自分の方が「大人」だと思っているのです。
しかし、太田光氏は政治について深く考えたことがないために、大衆受けするような発言をしたのです。中学校の学級委員が言いそうなセリフですね。「知的なお笑い芸人」の底が知れようというものです。
太田光氏は大人でも何でもありません。人の良い無知な芸人に過ぎないのです。政治のおぞましさも、残酷さも、本質的には羊の皮をかぶった狼であることにも気づいていません。政治とは一方が他方を支配するという権力関係なのです。「幼稚」だとか「大人」だというようなポエムではありません。
今回のブログは、どうでもいい芸人を批判するのが目的ではありません。ただ、彼が吐いたセリフがこの国の政治的な言説の水準を示していると感じ、いやな気分になったのです。彼の発想は大衆の中に浸透し、結果的に安倍政権を利しているのです。ネトウヨの言説レベルそのものです。
この際、他の国と比較してみましょう。ヨーロッパの先進国は言うまでもなく、アメリカでもジャーナリストが権力者と飲食をともにすればたちどころに信頼を失い仕事ができなくなります。コーヒー一杯が限度だそうです。彼らは「幼稚」なのでしょうか?
そもそも「桜を見る会」の費用はだれが払っているのでしょうか。太田光氏は国民の税金で飲み食いしていることなど知らなかったのでしょう。要は税金を使って選挙基盤を固めることに利用されていたに過ぎません。元暴力団員も招待されていたのですから。
つまり、安倍政権の支持基盤は、論理的な思考と屁理屈の区別がつかない政治家やジャーナリスト、作家、学者、官僚そして「幼稚」な芸能人だということです。忘れていました。パンとサーカスで痴呆になった国民もです。
しつこいようですが、論理的思考は、あくまで具体的な事実によって組み立てられなければなりません。最近のブログでも以下のように書きました。
「 いったん大風呂敷を広げれば、それをたたんで具体的に論じることは不可能とは言わないまでも、大変難しくなります。(この場合大風呂敷とは「政策が違うからって会わないっていうのは、あまりにも幼稚じゃないですか。」を指します)
人は抽象から学習し始めるのではありません。抽象論は事実を詳細かつ具体的に検討した後、それを材料として論理的に組み立てるものです。論理的思考とは具体例を豊富に、かつ整合的に使う思考です。なぜなら、人が生きるのは、机上の理論よりもはるかに複雑な事実の世界だからです。
抽象論は現実の経験とのかかわりが不明なのです。つまりいくらでもごまかしがきくということです。具体的な事実を知らなければ、空虚で意味不明な言葉をもてあそぶほかありません。」と。
『開成中学・高等学校長 − 柳沢幸雄氏を批判する。』
http://oitamiraijuku.jugem.jp/?eid=614
以下、太田光氏と大橋巨泉氏の議論の該当個所を引用します。全文は以下から確認できます。今となっては利用されていたのは二人のうちどちらだったのかはっきりしています。ちなみに、引用元はラジオからですが、私が確認したのはテレビでした。ラジオを聴くことはほとんどありません。
http://sekasuu.com/blog-entry-7839.html
太田光:「何故、桜を見る会に行ったんだ?」って巨泉さんは言うけど、行かなきゃ意味ないじゃんって思うんですよ。
大橋巨泉:お前は安倍さんを知ってるんだな。俺は安倍晋太郎さんは知ってるけど、安倍晋三さんは一度も会ったこともないから。
太田光:会えば良いんだよ。
太田光:政策が違うからって会わないっていうのは、あまりにも幼稚じゃないですか。それと同じなんですよ。俺が思うのは安倍さんと俺は、考えてること全然違いますよ。
(中略)
太田光:闘えばいいじゃん。安倍さんと会って、「お前のやってること、間違ってるぞ」って言えば良いじゃん。
大橋巨泉:待って。そういう席か?そういう席じゃないから、行っても無駄なんだよ。そういう席なら行きますよ。1対1で、こういうスタジオで話すっていうんなら、喜んで行きますよ。
太田光:だから、巨泉さんが行って、「今度、俺の番組に出てくれ」なり、雑誌での対談でもなんでも良いけど、「俺が来たんだから、一回、じっくり話そうや」って。安倍さんの側から、オファーが来たわけでしょ?ってことは、ご意見伺いたいって意味あいですよ。
大橋巨泉:いやいや、違います。太田みたく尻尾振ってくれば、「よし、利用してやる」って。それなりに、こっちがリスペクトできることをやってきた人なら、僕は頭を垂れても行きますよ。でも、やってないから。翁長さんにも会わない、その前に、翁長さんが上京したときに、自民党関係者に誰にも会わせない。そういうことをしている人間は、全然リスペクトできないから。会う価値なんかありません。
太田光:それは、翁長さんと会わない安倍さんと一緒じゃないですか。
大橋巨泉:いやいや、違うよ。俺は一野人だけど、翁長さんはあれだけの沖縄県民の声を背負った、公人ですよ。それを会わないで。世論が逆になったからヤバイなってことで…
太田光:それは屁理屈だわ。巨泉さんに期待してる人だっていっぱいいますよ