昨日は伊方原発運転差し止め訴訟(本訴)の第15回口頭弁論を傍聴するために大分地裁へ行ってきました。キューバから帰国したばかりの疾風自由日記のSさんとも会うことができました。
アメリカに逆らい、ソ連という後ろ盾を失ったキューバの現状にショックを受けたとのことです。人間は結局自分の経済的利益のためにしか生きられない存在なのだろうか、とSさんは小声でつぶやいていました。夕方から塾があるので、時間的余裕がなく、地裁を後にしましたが、またいつか続きを話したいものです。
口頭弁論では原告の女性の意見陳述を聞きました。彼女は1950年代生まれの、杵築で農業を営んでいる女性です。陳述書を読み上げる声は、淡々としていますが、自分の中からあふれ出た正直な気持ちが伝わる素晴らしい内容でした。
原発はテクノロジーの問題でも、経済活動の問題でもなく、ましてや法解釈の問題でもない。私たちの過去、現在、そして子供たちに残すべき未来を破壊するものである。それを許すのかという、今を生きる私たちに突きつけられている倫理の問題である、と彼女は訴えたのです。
3・11以降、原発事故から10日余りしかたっていない時に、ドイツのメルケル首相は「安全なエネルギー供給のための倫理委員会」を設置し、そこで議論を重ね、脱原発に舵を切りました。この倫理委員会は「賢人会議」と呼ばれています。17人の委員のうち、原子力業界の関係者はおらず、社会学者や哲学者、キリスト教関係者らなどから構成されていました。彼我の思想的レベル(つまり個人と国家とを問わず、いかに生きるべきかと問い続けること)の違いに私は茫然自失したのです。
このことは4年前に書いています。時間が許せばどうぞお読み下さい。
『倫理を排除したつけは、誰が払うのか。』
http://oitamiraijuku.jugem.jp/?eid=156
意見陳述の後、弁護士の徳田靖之氏が準備書面を読み上げました。今年に入って四国電力が犯した重大なミス、つまり定期点検中に制御棒を引き抜いたこと、および全電源喪失に陥るという信じがたいミスに言及して四国電力を追及したのです。そして、広島高裁の伊方原発の運転停止を命じる仮処分の正当性について述べました。
徳田靖之弁護士も指摘している通り、伊方原発ではここ一カ月の間に小さな事故が続いています。いや、制御棒の引き抜きも全電源喪失も小さな事故ではありません。航空機事故でもよく言われることですが、重大事故の前には小さなミスが頻発します。小事故の頻発は大事故の前兆である場合が多いのです。地震や津波に気をとられていると、人為的なミスを過小評価するようになります。
それが証拠に、電力会社は決まって放射能漏れはなかったと言い、マスコミはそれを調べもせずにそのまま報道しています。そもそも、マスコミは以下の事実を国民に周知したでしょうか。
福島第一原発事故の後、2012年10月に国は避難政策を公表しました。その「原子力災害対策指針」には何と書かれているか。
「地上に設置したモニタリングポスト(MP=線量計)が高い数値を示したら、避難を開始する」と書かれていたのです。地上のMPが高い数値を示しているということは、すでにそこに高濃度の放射性物質のプルーム(雲)が到達していることを意味します。そうなれば当然、周囲の住民も放射性物質を浴びて被曝しているはずです。私はこれを読んで愕然としました。事故の際、国は国民を見捨てる、と宣言しているのですから。そして、『原発事故避難訓練は、故郷を捨てる訓練である。』を書きました。
『原発事故避難訓練は、故郷を捨てる訓練である。』
http://oitamiraijuku.jugem.jp/?eid=109
そもそも、原発事故で放出された放射性物質を浴びないために、住民は避難するはずです。「被曝してから、避難するかどうか決めましょう」という新指針の内容は、どう考えてもおかしい。しかもその裏で、放射性プルームが流れる方角を予想するために100億円以上の予算をかけて作られた「スピーディー」をお蔵入りにしたのです。しかし、私の知る範囲では、新聞・TVなどマスコミや学識者はそれを批判どころか、指摘すらしていません。
原発は国民の命よりも金儲け(経済と言います)を優先する財界(原子力ムラと言います)の反倫理性を象徴するものです。いや、その意向を受けて地獄行きのバスを運転するサルをいまだに支持する国民のバカさ加減を象徴しているのです。国会で意味不明のサル語をしゃべる一人物が主役を演じることができるようにしているのは、国民なのです。
住民の命や暮らしなどなんとも思っていない、いや、そもそもそういった感情を育てられていないサルがこの国の至るところに生息しているのです。国民を分断させるのか、ですって?分断けっこう。私は「サル」とは暮らせない器量の小さい人間なのです。でも、ニワトリとは暮らせます、なんちゃって。
以下、サルの具体例をお目にかけましょう。
佐賀 玄海町長 約100万円受け取る 福井県の原発関連会社から
2020年1月23日
https://www3.nhk.or.jp/news/html/
もうお忘れかと思いますが、以下の本もぜひお読みください。